何が何やらワケワカメ

映像作品(主に特撮やアニメ、ホラー)について書く。

ドラゴンボール超 改悪(?)の原因とは。


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ドラゴンボール超の感想として、以下のような批判的な意見を耳にします。

「つまらない」
「戦闘シーンに迫力がない」
「話のテンポ悪すぎ」
「作画が………」
「キャラがただの置物になってる、何で喋らないんだ」

かなり厳しい評価だとは思いますが、考えは理解できます。私自身、これらの意見に頷ける部分があるからです。


今回は「戦闘シーンに迫力がない」、この原因について考えたいと思います。この原因を考察する際「作画枚数による問題」も含まれますが、以前の記事で少し触れたので今回は割愛します。



  • 暴力描写についての規制

この要素が今のドラゴンボール(以下:DB)にかなりの影響を与えているのは間違いありません。その影響を3点述べていきます。


【影響その1「流血描写」について】

「流血描写」は戦闘の凄まじさを物語る、非常に有効な手法である。しかしこれを用いていない。

これはDBに限った話ではなく、2014年3月30日までフジテレビ日曜朝9時に放送されていた「トリコ」で既に「流血描写」は省かれていた。

「トリコVSトミーロッド戦」

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グルメ87。

原作のこの場面では、過激な描写が用いられている。「流血」、「人肉を食す」。

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第34話。

グルメ87と同場面であるが「流血」していないのは一目瞭然。「人肉を食す」という描写は、トミーの放つ沸騰した虫の卵による「爆発」に変更されている。


しかし第120話では、「流血描写」を用いていた。119話を経たのちの解禁である。

(※もしかしたらそれ以前から解禁していたかも知れませんが、私が視聴し続けていた限り第120話で確認できました)

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第120話。

「流血描写」は、フジテレビ日曜朝9時の番組枠で使用してはならない訳ではない。しかし、好ましくはない描写であることは間違いないと思います。DB超もその煽りを受けて、制作されています。


【影響その2  国際標準化による制作 】

今のDBは国内外を視野に入れて、制作されています。海外の規制は日本の規制よりも遥かに厳しいものです。

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アメリカでの「ONE PIECE」のサンジ。彼のトレードマークのタバコはキャンディーに。またスモーカーも、葉巻を吸わないという変更がなされている。
人気作品を海外へ 日本アニメの新戦略
(中略)
特に子ども向けアニメの場合、日本とは比較にならないほど表現に対する規制があるからです。
そのため今回は、日本で多く見られる流血の場面はできるだけ避けるようにしています。そうした世界に広く受け入れられるようにする「標準化」を進めることで、この会社は各国のファンを獲得しようとしています。
出典:逆襲なるか 日本アニメ ~海外輸出・新戦略の行方~ 
上記で引用した箇所は、東映アニメーションが海外へアニメを輸出する際の戦略を指しています。

今一度、新たに始動した「ドラゴンボール」は、「ONE PIECE」のように海外に輸出する際に変更を加えるのではなく、最初から「標準化」して制作する方針に移行しています。

海外で凄まじい人気を誇るDB。国に合わせて作品をローカライズする手間を考えたら、内容を画一的にする方が合理的です。


【影響その3 効果音の変更】

熱心なファンの方でしたら物凄い違和感を覚えていることと思います。それは、従来のDBシリーズで用いられた効果音(サウンドエフェクト)が、DB超では変更されていることです。DB独特なあの打撃音、とても重みがあって戦闘の迫力を引き立てます。


効果音が変更された理由は、戦闘の迫力を削ぐ為であると思います。

私自身「効果音おかしいだろ……」と戦闘時に思うようになりました。以前の効果音より、音が軽いと。それは暴力に伴う痛みを視聴者に感じさせない為の配慮ではないかと考えるようになります。

否定的な言い方をすれば、DBは暴力的な作品です。それを不快に思う視聴者は当然います、「流血描写」についても同様です。

DB超のスポンサーの筆頭は「バンダイ」です。バンダイとしてはDB関連の玩具、ゲームを売りたい。その商品を買うのは視聴者である子供の親です。その親の視点であれば、暴力的な作品を子供に見せるのは如何なものか?と疑問に思うのは想像に容易い。


以上のことから、親御さんに向けて「より健全な作品」を提供する必要がある、との結論に至ったと思います。その為に「DBの戦闘」に変更点を加える。その一つが「効果音」であると私は考察しました。




  • 最後に。


昨今の映像メディアは自主規制の基に、以前より遥かに厳しい制作態勢であるのが実状だと思います。

何故自主規制を強化しているのか、それは

コンプライアンス(法令遵守)

をより意識するようになったからです。

しかしこれは大衆に向けての建前で、要はクレームが来ないようにする為、の逃げ道に過ぎない。

クレームが来るのは、スポンサーにとって快くない。情報が飛躍的に拡散するようになった現代では、クレームは企業に悪いイメージを定着させてしまう恐れがあり軽視できない要素。「クレームが多い番組に資金を提供している悪い企業」のレッテルを貼られるのを恐れるスポンサーサイドの本音を汲み取れば、放送局がクレームに真摯に配慮しなければならない。その結果、作品の表現が萎縮する。



考え過ぎであれば良いのですが、「ドラゴンボール超」もこのような要因が複雑に絡み合ったが末に、今の完成度になっているのではと危惧した次第です。


今回DBの戦闘の迫力が失われた原因について述べましたが、しかしながら「ONE PIECE」はそれらの問題を幾つか潜り抜けている節があります。何故なのか、それはまたの機会に述べたいと思います。