何が何やらワケワカメ

映像作品(主に特撮やアニメ、ホラー)について書く。

【映画レビュー】トラウマからの脱却?…な「ヴィジット」。

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先日観賞してきました、ホラー映画「ヴィジット」。M・ナイト・シャマラン監督の最新作です。詳細な情報はこちらでご確認ください。(映画COM×ヴィジット特集ページ)

結論からすると、非常に面白かったです。観客の予想を裏切りながら期待には応えている、手堅い仕上がりの良作品でした。

【あらすじ】
シングルマザーに育てられている15歳の姉ベッカと13歳の弟タイラーは、祖父母から休暇を利用して遊びに来ないかとの誘いを受ける。

2人はペンシルバニアの祖父母の家で1週間を過ごすことになる。初めて対面する祖父母に最初は緊張したものの、優しい祖父母と美味しい料理に2人は大喜びし、すっかり意気投合する。

ただ、祖父母からは、「楽しい時間を過ごすこと」、「好きなものは遠慮なく食べること」、「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。

しかし、夜中になると、家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。それに恐怖を覚えた2人は、開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまう…。(出典:Wikipedia ヴィジット(映画)の項目。一部抜粋。)
それでは、具体的な感想を述べたいと思います。記事はネタバレを含みますので、予めご了承ください。

  • 観客の予想をことごとく掻い潜る。

スリードを誘う要素を巧妙に配置して、観客の意表を突いた物語。私自身結末を予測しながら楽しんでいたのですが、ことごとく外れてしまい…。まんまとシャマラン監督の術中にハマった一人です。ある場面から空気は一変し、不可解な出来事への疑念は確信に変わる。背筋がゾクゾクする快感が得られますよ。

(*私は途中まで「姉弟」と「祖父母」は"合わせ鏡の関係"であると考察していました。姉弟は父を失い、祖父母は娘を失っている。家族を失って精神に異常をきたした者達。姉弟は自分達の成れの果てかも知れない祖父母を見て、健常な精神を取り戻していく…的なシナリオを予想していました。大ハズレでしたが(((^^;)…)

  • 自分と向き合う。

15歳の少女ベッカと、自称"T・ダイヤモンド"こと13歳の少年タイラー。今作品はこの姉弟の物語である。
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(左:ベッカ、右:タイラー)
この二人は「父との離別」を経験したことにより、精神的な問題を抱えている。ベッカは鏡を見れない(自分を直視できない)、タイラーは病的なまでに潔癖症(現状の生活を受け入れられない)である。

しかし、姉弟の身に死の恐怖が迫った時、否応なく自分自身と向き合うことになる。トラウマを自覚し、彼らが人間として成長する過程が物語の肝です。恐怖から脱すること、自分の殻を打ち破ること(過去を受け入れること)、これらが重なり合い物語にカタルシスを与えた。

  • 訪問者は誰?

是非、今作の"タイトルの意味"を念頭に入れて観賞してみてください。キャッチコピーの「あなたは絶対に“その約束”をやぶることになる――」を考慮する必要はない。
【3つの約束】
「楽しい時間を過ごすこと」
「好きなものは遠慮なく食べること」
「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」
わざわざ【3つの約束】を提示したのは3つ目の約束の不気味さを際立たせる為であり、残り2つは極当たり前な約束事を掲げたに過ぎない。よって3つ目の「夜9時30分以降…」の約束以外には意味がない。

  • まとめ。

如何にも予算を費やしたであろう豪快な映像は一切ありません。しかし、ホラー作品らしい陰湿で怪しげな雰囲気を味わえます。

穏やかな日常が不穏な様相を呈していく過程は、「リング」の呪いのビデオによる"死へのカウントダウン"を彷彿とさせた。姉弟が祖父母宅で過ごす期間が1週間、一日経つ度に画面に「○曜日」と標示される。呪いのビデオは7日後に"死"が訪れる。タイムリミットを設けている物語の構造は共通する。
「日本映画は大好きだしたくさん見ているから無意識のうちに影響されているところがあると思う。日本のホラー映画からアイデアを盗んだことはあるだろうね。でも意識的にやった訳じゃないよ(笑)」(出典:『シックス・センス』シャマラン監督、新作は“あの”Jホラーから影響?のシャマラン監督のコメントを一部抜粋。)
"Jホラー"の影響を受けているのであれば、嬉しい限りですね。

ホラー映画は悲惨な結末を遂げるものが多く観賞後に虚しさを覚えるのですが、過去を乗り越えて家族が歩みだす姿は清々しい。充実感を与えてくれる良質な作品でした。

あと"T・ダイヤモンド"氏の笑いを誘うラップは必見です、和みますよー。