何が何やらワケワカメ

映像作品(主に特撮やアニメ、ホラー)について書く。

何故、ワンパンで勝てるのか?「ワンパンマン考察第1回」


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絶賛放映中のTVアニメ「ワンパンマン(ONE PUNCH MAN)」、非常に楽しく拝見しています。原作は人気青年漫画で、現在9巻まで発売されています。

タイトルにあるように、主人公サイタマは「ワンパンチ」で殆どの物事を解決してしまう。この作品の魅力は、この圧倒的な爽快感にあります。何一つ、相対する者との駆け引きや攻防が無く完全なワンサイドゲームが描かれています。徹底的に他の追従を許さないほどの「最強」である。


では何故、サイタマがそれほど強いのか? 今回はその強さの秘密に迫りたいと思います。 

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  • サイタマの強さの秘密。

それは
「サイタマの求めるものは、強さ(武力)ではないから」
です。

ジェノスは師と仰ぎ、音速のソニックはライバルと見なし、無免ライダーは信頼を置いている。サイタマの実力を認めてその強さに憧れている者がいる中、当の本人が求めているものは別にある。

  • サイタマの苦悩。

サイタマは、中学生時代に人間社会への不信感を募らせます。

コミックス1巻の番外編で、サイタマは上級生にカツアゲされています。その時の彼は、上級生の暴力に抗えないほど非力であった。だがその直後に怪人が現れて、今度はその上級生に対してカツアゲを行った。この時サイタマは、「弱者は強者に虐げられる」という非情な現実を目の当たりにしました。

またサイタマは、クラスの担任に目障りな存在だと思われていた。それは、サイタマが立派な生徒ではなかったからです。担任にとっての立派な生徒とは、自分の言うことを文句なく受け入れる従順な生徒、そのような都合の良い子供ではないサイタマが気にくわない担任は、頭ごなしに彼を否定をしてくる。

サイタマ自身は、自分らしく生きているに過ぎなかった。客観的に見ても、普通の行動である。
しかし、生き方が不器用ではある。少し相手に合わせて自分を圧し殺せば、何の衝突もなく楽に生きていける。しかし、サイタマはそれをしない。人間社会は同調性を求めていることを普通の人々は知っているので、サイタマが変人であると白い目で見る。サイタマは孤独だ。

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このような人達と接したことによって、サイタマは苦悩する。
「社会と相性が良くないのかな」
「どうやって生きたらいいのか 全然わからない」
「俺は負けてばかりだ…こんなに弱くてまともに生きていけるのか?俺?」
生活しているこの社会に疑問を抱くようになった場面です。彼はこの答えを求める為に、己を鍛えたのです。鍛練を積み、後に強者になれた。しかし、中学生の時に抱いた疑問への回答はまだ得られてはいない。

つまり、彼が欲しかったものは「肉体的な強さ」ではなく
「【サイタマ】という一個人が、不条理な社会で生きていく方法」
である。それは自分を偽って生活できれば良いのではなく、社会に疑問を感じながらも自分が正直に生きていく方法は何なのか?、それを模索している途中に己を鍛えたに過ぎなかった。それがコミックス1巻2撃目「蟹と就活」でのサイタマの台詞に象徴されます。
「……無敵のパワーを身につけることに成功した なりたかったヒーローになれたはずだった」
「だが なぜだろう こんなにも心が満たされないのは」
彼の欲しかったものは「力」ではなかったことが、早くも明かされています。

  • サイタマの「敵」。

サイタマは「不条理な社会」という、抽象的であり強大なものを「敵」として定めています(無自覚的に)。そのことにより、抽象的で漠然とした「強さ」を手にした。

なので、彼の強さに近づきたいジェノスや彼を打倒したい音速のソニックは、今のままでは追い付くことは絶対に不可能である。それは目標として見据えているものが違うから。
「俺が先生の強さに近づける イメージが全く湧かない」
「次元が違う」
(コミックス3巻17撃目「手合わせ」でのジェノスの台詞。)ジェノスは「暴走サイボーグ」の行方を追う為に戦っていると言える。そのような一怪人や一組織を相手にしている以上、ジェノスがサイタマに追い付くことはあり得ません。

  • 結論。

  • 腕立て伏せ100回
  • 上体起こし100回
  • スクワット100回
  • ランニング10km

サイタマは過酷なトレーニングを積んだから強くなれたと思っていますが、これらは全く意味がないと思われます。

彼の強さは「不条理な社会」「社会悪」という次元の違う敵(概念)を相手にしているからであって、肉体的な強さはまるで意味がない。劇中に出てくるキャラクター達がいつまでも肉体的な強さを求め続ける限り、サイタマは「ワンパンチ」で相手を倒し続けることができます。

逆に言えば、サイタマに倒せない相手が現れたのなら、その相手は彼の求める答えを備えているのだと思います。コミックス8巻では、それらしき敵が現れています。楽しみです。

後、気になる点がありました。
「彼の肉体には神が宿っているよ」
コミックス3巻16撃目「合格しました」。ヒーロー協会の人間がサイタマについて、上記のことを言っていました。これは「ワンパンマン」作中において一体どんな意味があるのか、今後も注目したいと思います。


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サイタマが自分の追い求める答えを見つけた時、彼はヒーローではなくなっているのかも知れません。


ワンパンマン考察 第二回」はワンパンマンの特殊な世界観について語りたいと思います。